チャラい社長は私が教育して差し上げます!
そして、恵子はシャーペンで私が書いたメモ書きに何かを書き込んでいき、それが終わると、

「ふうー、こんな感じかな」

と言い、メモ書きを私と社長が読めるように向きを変えた。

「私が書き込んだ内容を説明するわね。まず『予算の計上』という表現は、『予算変更』に変えたの。だって、開発部には既に予算が割り振られていて、今回はその予算を増やしてもらうのでしょ?

だから”計上”ではなく”変更”になると思う」

「うんうん、確かにそうだね」

「となると、かなりハードルが下がるから、会議に招集する相手は〇を付けた3人でいいと思う」

私は会議の招集候補を10人ぐらい列挙したのだけど、その中の3人だけ丸で囲まれていた。

「まずはCFOで財務部長兼務の宮沢さん。この人は財務の責任者だから絶対に外せない。次はCOOで副社長の麻生さん。この人は経営戦略を統括する人だから、参加してもらった方がいいと思う」

「うんうん、なるほどね……」

「最後は最高顧問で前社長の神徳善造さん。この人は実質的な最高権力者だから外せないわ。あ、すみません、社長」

「いいって。それが事実だから俺は気にしないよ」

恵子ったら、社長と目が合ったら、顔を赤くしてポーっとしちゃってる。しかも目がハートになってるし。

「恵子。集中して!」

「あ、うん、ごめん。何だっけ? あ、そうそう、会議の招集者はその3人でいいと思う。3人だけなら、招集の通知を送る前に、個別に打診しておいた方がスムーズに進行すると思うんだけど、誰がそれをするかと言うと……」

「俺がやるよ。おやじが一番手強いが、何とかする」

「そうですね。それがいいと思います」

恵子はそう言いながら、社長を見てまたポーっとした。

「恵子、集中!」

「え? ああ、ごめん。えーっと、どこまで話したっけ?」

もう……
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