チャラい社長は私が教育して差し上げます!
「招集前の打診まで話したんだったわね。そこまでで質問はある?」

「ないです」

「会議の資料は舞がパワポで作るのよね?」

「うん。パワポは営業部でよく使ってたからバッチリよ?」

「そう? なるべく早く作って、招集通知メールに添付するのを忘れないでね?」

「承知しました」

「資料とは別に、動画を作るといいと思う。でも機密だと外部には頼みにくいから、舞は作れる?」

「スマホで良ければ」

「内部の会議用だから、スマホの動画でいいと思う。インパクトさえあれば、少々出気が悪くても大丈夫よ」

「了解です」

「最後に、念のため委任状を書いて、開発部長の玉木さんに署名してもらった方がいいわね。だって、本来の申請者は開発部長のはずだから」

「なるほど。委任先は?」

「もちろん神徳社長よ」
「了解」

「うーん、素晴らしい。ありがとう。おかげで目途が付いたよ。な、舞」

「うん、じゃなかった、はい、社長」

社長が『舞』って言った時、恵子の眉がピクッと動いた。

「恵子、ありがとう。すごく気が楽になったよ」

「そう? じゃあ、お礼にお酒を奢ってよ?」

「え?」

「それは冗談。この後、飲みに行かない?」

と恵子から言われ、私がどう返事をするか悩んでいたら、

「悪いけど、車だから無理だな」

と、社長が横から余計な事を口走り、案の定恵子は、私と社長を怪訝な目で見ていた。

「ああ、ごめん。余計な事を言っちゃって。舞は電車で帰って来いよ。じゃ」

とか言って、社長はさっさと会議室を出て行ってしまった。

もう社長ったら、最後の一言が一番余計だっちゅーの!
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