チャラい社長は私が教育して差し上げます!
その証拠に……
「じゃ、私も……」
と言って私が会議室を出ようとしたら、恵子にブラウスの袖を引っ張られてしまった。
「どうなってるのか、説明して頂戴。まだ時間あるし」
という事になってしまった。社長の失言を、恵子が聞き逃すはずないもんね。私は覚悟を決め、椅子に座り直した。
「えっとね、昨日、私は社長に随行して開発工場へ行ったのね。社長の車で行ったんだけど、なんと真紅のR2020なのよ。もう目立って目立って、誇らしいやら恥ずかしいやら。R2020ってドアがガル……」
「ストップ!」
「何よ?」
「今説明してほしいのは、あんたと社長の関係よ。それに絞って頂戴。ガルウィングの話は今度聞くから」
「はーい。開発工場の帰りに、私はアパートまで社長に送ってもらったの。いつもよりうんと早い時刻だった。そしたらね、聡が女の子を部屋に連れ込むところを目撃しちゃったの」
「あらま。サイテーの男だね?」
「うん。それで私はアパートに帰れなくなって、社長のタワマンに泊めていただいたの」
「え? じゃあ、あんた達はもう、そういう関係なの?」
「ううん、違うの。一緒には寝たけど、まだそういう関係ではないの」
「ふーん、微妙だわね」
「それでね、私は一晩だけのつもりだったんだけど、社長はしばらく居ろって言ってくれて、同居する事になったのよ」
「なるほどね……」
「この後、飲みに行く?」
「ううん、今日はやめとこ? 舞の方が落ち着いたら、行きましょう?」
「うん、わかった」
「それにしても……」と言って恵子はなぜか顔を赤くした。
「神徳さん、すっごい素敵になったね? 告っちゃおうかなあ」
「えっ」
「嘘よ。親友の恋路を、邪魔するわけないでしょ?」
「恋路って、私は恵子に何も言ってないじゃない?」
「言わなくても解るわよ。あんたは解りやすいから。彼も」
「え? それって……」
最後の意味がよく解らかったのだけど、
「じゃ、しっかりね?」
と言い、恵子は行ってしまった。