チャラい社長は私が教育して差し上げます!
社長の女性遍歴
終業時刻になり、社長を秘書課の出口までお見送りし、続いて私も退社し、私服に着替えて地下駐車場のR2020に乗り込んだのは、社長をお見送りして約5分後だった。

「お待たせしました」
「お疲れ様。暖気運転してたから、丁度良かったよ」

「でしょ? 実は時間を計ったんだけど、5分遅れが丁度いいみたい。いつもこのパターンにしようっと」

「なんか、楽しそうだな?」
「うん、楽しいかも」

なんか秘密の社内恋愛っぽくて、楽しいし、嬉しいと私は思った。

「さてと、晩飯は何を食べようか?」

「外食ですか?」
「もちろん」

「社長はいつも外食なんですか?」

「最近はそうかな」
「社長って、お料理は出来るんですか?」

「いいや、出来ない。って言うか、しない」

「なるほど……」
「何が”なるほど”なんだよ?」

つまり社長は、最近まで『明美ちゃん』もしくは『紗耶香ちゃん』あるいは謎の3人目の女の子と同居していて、その彼女に晩ご飯を作ってもらっていたわけか。

でも、そんな社長の女性遍歴に触れると、せっかくの楽しい気分が台無しだから、触れないでおこうっと。

「マンションに、調理器具や食器ってあるんですよね?」

「ああ、一通りは」
「やっぱりかあ」

「おい、何が”やっぱり”なんだよ?」

「私も晩ご飯を作りますね?」

「”私も”って何?」

”私も”は余計だったなあ。

「そこはスルーでお願いします。私めに、晩ご飯を作らせてくださりませ」

「お、おお。ぜひお願いつかまつる」

「して、殿にお嫌いな物はござりますかな?」

「普通に話さないか?」
「すみません」

ちっ。自分だって、調子を合わせたくせに……
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