チャラい社長は私が教育して差し上げます!
私達を乗せた真紅のR2020は、一路北へ向かって走っている。お天気はほぼ快晴で、正にドライブ日和って感じだ。

社長には、初めの頃に着ていた派手な服ではなく、なるべく落ち着いた服を着てもらうようお願いした。両親を驚かさないように。

その結果、白のスラックスに白地に細い水色のボーダーが入ったポロシャツを着て、その上に黒い麻のジャケットという出で立ち。落ち着いているかは微妙だけど、私は格好いいなと思った。

ちなみに私の服装は通勤時と同じ。お洒落っけのないパンツルック。だって、そういう服しかアパートから持って来てないから。

「もう、誰かさんのおかげで、お昼になっちゃったじゃない」

「おまえだって夢中になってただろ? 人のせいにすんな」

「それはそうだけど……。母に遅くなるって電話する?」

「いや、全然大丈夫。むしろ余裕だよ。次のサービスエリアで昼飯を食おうぜ」

私達は埼玉のサービスエリアで『鰻のひつまぶし』を食べた。社長は、それが目当てでそのサービスエリアに寄ったらしいのだけど、私は初めて食べた。鰻が柔らくて美味しく、最後にお出しを掛けて、お茶漬けみたいにして食べたのは特に美味しいと思った。

「そう言えば、舞の実家の話って、まだ聞いてなかったな」

「そう言えばそうだね。と言っても、あまり説明するような事はないかな。父は会社員で、母は専業主婦。姉弟は、二つ下の弟が一人。以上」

「ずいぶん端折ったな」
「直哉さんのご家族は?」

「俺の方も簡単だな。親父は舞も知っての通り、前社長で最高顧問。おふくろは専業主婦で、3つ上の姉貴が一人。以上」

「確かに簡単だったね」
「だろ? あはは」

お腹が膨れ、春の陽射しが温かくて、私はつい、うとうとしてしまった。
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