チャラい社長は私が教育して差し上げます!
「社長って、M社の社長なのか?」

「当たり前でしょ?」
「そ、それは、失礼しました!」

とか言って、父は慌てて立ち上がった。そして、

「日頃は娘がお世話になりまして……」

と言い、父は社長に深々とお辞儀をした。社長も慌てて立ち上がると、

「いえいえ、こちらこそ。舞さんには頼りっぱなしで……」

などと言った。社長って、私に頼ってるって意識があったの? ちっとも知らなかった。

「落ち着かないから、二人とも座ってよ」

「そうだな。社長、どうぞお座りください」

「いえいえ、お義父さんこそ座ってください」

「いえいえ、社長から」
「いえ、お義父さんから」

「同時に座ればいいでしょ!」

もう、大人って面倒臭いんだから……
私も一応は大人だけど。

「で、式はいつ頃、挙げるのかしら?」

母は社長が社長と知ったからか、目はハートになり、頬を紅く染めながらそう言ったのだけど、

「”式”って?」
「あらやだ、あなた達の結婚式に決まってるでしょ?」

「け、結婚式!? そんなの、考えた事もないよ。ねえ?」

と横の社長に振ったのだけど、

「年内には挙げたいと思います」

って言った。年内!?

「そんな話、聞いてないんだけど?」

「今、初めて言ったからな」

純白のウェディングドレスを身に纏い、シルバーのタキシードを着た社長に向かい、父のエスコートでバージンロードをゆっくり歩く自分の姿を想い描いたら、顔がカーッと熱くなるのを私は覚えた。
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