チャラい社長は私が教育して差し上げます!
そうこうしている内に、直哉さんの実家に着いたらしい。家と言うよりも、お屋敷と言う感じ。

「大きなお家ですね」
「そんな事ないだろ?」

いいえ、そんな事、あります。

直哉さんはダッシュボードからリモコンを取り出し、そのボタンを押すと、門の扉が横にすーっと開いた。そして、駐車スペースには高級車が3台程駐まっていて、その横にR2020を駐め、私達は小走りで玄関の前へ行った。

私がハンカチで髪や顔に着いた雨の雫を拭っていたら、大きな扉が手前に開き、中から50代と思われる女性が現れた。お母様かしら?

「お坊ちゃま、お帰りなさいませ」

お母様ではないらしい。でも、”お坊ちゃま”って……。私は思わず、笑いそうになってしまった。

「ただいま。いい加減、その呼び方はやめてほしいなあ」

「そう言われましても……」
「こちらは家政婦の三田さん。で、こっちは俺の秘書で恋人の朝倉舞さん」

「あらあらあら。家政婦の三田佳子(みたよしこ)でございます」

「朝倉舞と申します」

家政婦さんがいるんだ。やっぱりお金持ちの家は違うなあ。でも、『あらあらあら』って言って、目を丸くしたのはなぜなんだろう。

「お坊ちゃんは、お一人で帰られると聞いてましたが?」

「予定が変わったんだ」
「そうでしたか。でも、本阿弥家のお嬢様がお見えですよ?」

「わかってる」

ああ、それで『あらあらあら』なのね。つまり、『修羅場になりますよ?』って事なんだわ。

「私ったら、余計な事を言ってすみません。皆さんは、客間でお待ちです」

「親父と姉貴もいるの?」
「はい、お二人ともいらっしゃいます」

「そっか」

私は玄関で靴を脱ぎ、三田さんが揃えて置いてくれたスリッパに履き替えた。その間、頭の中で数えたら、客間で私達を待つ人の数は6人と思われた。

もし全員が敵だとしたら、私達に勝ち目はないように思う。とても残念な事だけども。
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