チャラい社長は私が教育して差し上げます!
「舞さん、ご実家はどちらなのかしら?」

突如、お母様は私に話を振って来た。

「東北の片田舎です」

「そう? お父様のご職業は何かしら?」

「会社員です。一応、部長です」

「あら、すごいのね。大きな会社なのかしら?」

「いいえ、小さい会社です。建築資材の販売会社で、従業員は100人にも満たないです」

『大きい会社です』と言いたいところだけど、嘘は吐きたくなかった。

「そうですか。ご存じの通り、直哉は神徳家の跡取りで、M社の代表取締役社長ですの。賢明なあなたなら、身を引いてくださるわよね?」

そう言って、お母様はドヤ顔をした。まるで勝利宣言のようだと思った。でも、

「私は、み……」

『身を引いたりしません!』と言おうとしたのだけど、

「いい加減にして!」

と誰かが叫び、言わせてもらえなかった。その誰かとは、今までは無言だった、お姉様の亜希子さんだった。

ちなみに無言と言えば、紗耶香さんのご両親もそうだった。お二人とも、まるで他人事のようにボーっとしていた。お二人を見てると、お金持ちのお坊ちゃん、お嬢ちゃんが、何の苦労のないまま歳を重ねた人達みたいだなと思った。言い過ぎかもだけど。

「お母さん、子どもの恋愛ごとに親が口出しするなんて、みっともない!」

「だっておまえ、普通の場合じゃないから……」

「普通でしょ? どこが普通じゃないの? 直哉も私も紗耶香さんも舞さんも、みんな普通の若者よ。それに、みんな大人なのよ。自分の人生を自分で決める権利ぐらい、あるはずだわ。親だからって、それを侵害していい訳は無いでしょ?」

その通りだと私も思う。みんな静まり返り、すぐに反論する人はいなかった。

「それと、舞さんは、直哉にはもったいないくらいの女性だと思う」

えっ、私が? そ、そうなのかなあ。
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