【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。
静かすぎるリビングに、時計の針が刻む音だけが響く。

涼介は、きっと今夜も帰れない。
そんなこと、わかっていたはずだった。

それでも、スマホをそっと手に取って、
LINEの画面を開いたり閉じたりを繰り返す。

──忙しいんだから、邪魔しちゃだめだよ。

頭では理解してるのに、心だけがうまく言うことを聞いてくれなかった。

そっとスマホを置いて、キッチンへ向かう。
適当にお湯を沸かして、カップに紅茶を淹れた。

だけど、口に運んだ途端、味がしなかった。
ふっと、小さく笑ってしまう。

──あぁ、涼介がいないだけで、こんなに世界が色をなくしてしまうんだ。

膝を抱えてソファに座ると、自然と視線が玄関の方へ向いた。
そこに、涼介の靴がないだけで、ぽっかりと穴が空いたみたいに思えた。

「……だめだなぁ、私」

小さな声が漏れる。

涼介が、誰よりも頑張っているのを知っている。
だから、泣きたいのは涼介のほうかもしれないのに。

なのに、どうして私は、こんなに弱いんだろう。

時計の針が、また一つ音を立てた。
夜が、じわじわと深くなっていく。

ふらりと立ち上がり、寝室へ向かう。
クローゼットから、涼介が休日にいつも着ているゆったりめのパーカーを取り出して、頭からかぶった。

少しだけ、涼介に包まれているような気がして、
それだけで、ほんの少しだけ、心が温かくなる。

ベッドに潜り込むと、毛布をぎゅっと抱きしめた。
毛布の中で、そっと目を閉じる。

──おかえりって、笑って言える自分でいたい。

静かに、静かに、そう誓った。

今日も明日も、その次の日も、
この寂しさを、全部涼介のために強さに変えていこう。

そう願いながら、
美香奈は、静かな夜の中に、そっと身を委ねた。
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