【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。
翌朝。

窓の隙間から、春のやわらかな陽射しが差し込んでいた。
目を覚ました美香奈は、隣にいる涼介の腕の中でぬくもりを感じながら、そっと瞬きをした。

涼介はもう目を開けていた。
ぼんやりと美香奈を見つめて、ふっと微笑む。

「おはよ」

低い、寝起きの声。
美香奈は恥ずかしくなって、顔をうずめた。

涼介はそんな美香奈の髪を撫でながら、ゆっくり顔を寄せる。
髪にキス、耳たぶにキス、ほおにキス──
そして、唇にも、何度も何度も、名残惜しそうにキスを落とす。

「……行きたくないな」

小さく、涼介が本音を漏らした。

美香奈はくすっと笑った。
それでも、時間は待ってくれない。

ぎりぎりまでベッドでじゃれ合いながら、
涼介は最後の最後まで、美香奈にキスを重ねた。
手の甲にも、指先にも、ひとつひとつ、大切に。

やがて、名残惜しそうにスーツに着替え、
玄関に立った涼介は、もう一度振り返った。

「行ってきます」

その言葉と一緒に、最後のキスを額に落とす。
指先まで恋しそうに触れて、それからようやくドアを開けた。

美香奈はぼうっとそれを見送ったあと、
ふと時計を見て、ハッとする。

「やばっ……!」

すでに家を出なければ間に合わない時間だった。
大慌てで荷物を掴み、コートを羽織りながら、
美香奈も家を飛び出していった。

──でも、心はとても軽かった。
昨日までの涙も、不安も、全部、どこか遠くへ消えていた。

今日も頑張れる。
そう思えた。

涼介が、そっとくれた朝だった。

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