【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。
「ただいま」

涼介がドアを開ける音と同時に、
美香奈はキッチンから顔を出した。

手にはふきん、エプロン姿。
まだ少しだけ緊張していたけれど、にっこり笑って、「おかえり」と言った。

涼介は、片手にテイクアウトの袋を持ったまま、ほっとした顔で微笑む。

「……うん、ただいま」

靴を脱ぎながら、ちらりと美香奈の姿を見ると、
そのまま一歩、二歩と距離を詰め──
エプロンの紐を引っかけるみたいに、指先で美香奈をくいっと引き寄せた。

「今日も可愛いな」

低く、優しい声。

美香奈はびっくりしながらも、自然と涼介の胸に手を置いた。

涼介は、エプロン越しの細い腰をそっと抱きしめ、
額を美香奈の額にぴたりとくっつける。

「……俺も、ちゃんと、帰ってくるから」

まるで誓うように、ぽつりと落とされた言葉に、
美香奈は目を潤ませながら、小さく「うん」と頷いた。

**

テーブルには、涼介が買ってきた美味しそうなご飯が並ぶ。
サラダ、スープ、ほかほかのメインディッシュ。

2人で「これ美味しそうだね」「これ好きかも」と話しながら、
いつもの食卓よりちょっとだけ豪華な夜ごはんを囲んだ。

「……ねえ、涼介」

美香奈が、ふと思いついたように顔を上げる。

「ん?」

「わたし、今すごく幸せだよ」

ぱあっと咲いたみたいな笑顔だった。

涼介は一瞬、言葉をなくした。

──ああ、こんなふうに思ってくれるんだ。

そんなふうに胸が熱くなって、
彼は美香奈の頭をぐしゃっと撫でた。

「……俺もだよ」

そう言って、もう一度、そっとキスをした。

食後のデザートに買ってきたケーキは、
すっかり溶けかけた生クリームまみれだったけど、
2人で顔を見合わせて笑い合った。

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