【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。

叶わないと思っていた夢のつづき

ある日、美咲からぽつりと告げられた。

「ねえ、美香奈。私たち……結婚式、やることにしたの」

カフェのテーブル越し、コーヒーの湯気がふわりと漂う中、
美咲は照れたように笑った。

「小さな式だけど、良かったら、来てほしいな」

その言葉に、美香奈はぱっと顔を明るくして、すぐにうなずいた。

「もちろん!ぜひ参加させて!」

本当に、心からそう思った。
大好きな美咲の、人生の大切な日。
側で祝えることが嬉しかった。

でも──

(いいなぁ……)

美香奈は、自分でも気づかないうちに、
心のどこかでそう呟いていた。

康太も、美咲も、
きっと家族に祝福されながら、あたたかい式を挙げるんだろう。

美香奈の胸に、静かに小さな痛みが広がる。

(私にはなかったものだ)

思い出すのは、子どものころ。
「お姉ちゃんは大変だから」「あなたは我慢して」
そう言われ続けた日々。

誰かに一番に大事にされることを、
当たり前に喜べることを、
心の底から羨ましいと思った。

──でも、そんな顔は見せたくなかった。

「ほんと、楽しみだね」

美香奈は、いつも通りの笑顔を浮かべた。

自分の中の小さな寂しさに、
そっと鍵をかけるみたいに。

< 22 / 88 >

この作品をシェア

pagetop