【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。
――結婚式当日

涼介と腕を組み、美香奈は式場のドアをくぐった。

美咲は、真っ白なドレスに身を包み、
誰よりも綺麗に笑っていた。

康太も、少し緊張しながらも、嬉しそうに隣に立っている。

ふたりが誓いの言葉を交わし、
ゲストから大きな拍手が湧いた瞬間、
美香奈は涼介の腕にぎゅっと力を込めた。

涼介は気づいたように、美香奈の手をそっと包み込んでくれる。

(大丈夫)

涼介の手の温もりが、そう言っている気がした。

美香奈は、少しだけ泣きそうな目をこらえながら、
大きな拍手を送った。

心から、ふたりの幸せを願いながら──。

――披露宴会場

式が終わり、披露宴が始まった。
花に囲まれた会場の中、康太と美咲は笑顔でゲストたちと話し、写真を撮っていた。

「幸せそうだな」
涼介が小さな声でつぶやく。

隣に座る美香奈も、微笑みながらうなずいた。
本当に、美咲はきれいで、康太は誇らしげだった。

──こんなふうに、
たくさんの人に祝福されて、
家族に喜ばれて、
当たり前に手を取り合える未来が、
ずっとずっと羨ましかった。

そんな気持ちを、
胸の奥にそっと押し込んで、笑顔を作る。

涼介は、そんな美香奈の横顔を静かに見つめた。
何も言わないけれど、きっと、全部わかっていた。

ふいに、涼介が少し身を乗り出して、美香奈に囁いた。

「俺たちも、写真……撮らないか?」

美香奈は一瞬きょとんとして、それから小さく笑った。

「いいよ、そんなの。恥ずかしいし……」

軽く手を振って断ろうとする。
だけど、涼介は穏やかに、美香奈の手を取った。

「──本当は、少しだけ、欲しいって思ってるだろ?」

低く、優しい声だった。

美香奈は、ドキリとした。
まるで心の奥を見透かされたみたいに、
言葉を失った。

「俺が欲しいんだ。……美香奈との写真」

涼介は、静かに、でもしっかりとそう言った。

美香奈の胸の奥で、
寂しかった子どものころの自分が、
そっと救われるような気がした。

「……うん」

たった一言だけ。
だけど、頷いた美香奈の目には、涙が滲んでいた。

涼介は優しく微笑み、
「あとで二人でも撮ろうな」と小さく付け加えた。

美香奈は、何度も何度も頷きながら、
隣にいる涼介の手を、ぎゅっと握り返した。

──大丈夫だ。
たとえ家族に祝福されなくても、
誰よりも強く、大切にしてくれる人が、すぐ隣にいる。

そう、心から思えた瞬間だった。
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