【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。
フォトウエディングの撮影を終えた翌朝。
ホテルの静かな部屋に差し込む朝の光の中で、美香奈と涼介はのんびりとした時間を過ごしていた。

心地よい余韻に包まれたまま身支度を済ませると、2人は神戸の街へと足を伸ばす。

潮の香りが混じるやわらかな風。
港のほうから反射する太陽の光が、歩道の石畳をきらきらと照らしている。

観光客に人気のエリアを歩きながら、美香奈は涼介と肩を並べて、たわいない会話に何度も笑顔を交わしていた。
すれ違う人々の視線がどこか和やかに感じられ、それさえも旅の一部のように思えた。

(なんだろう、この時間……ただ一緒に歩いているだけなのに、こんなに満たされてる)
美香奈はふと、そんな感情に包まれていた。

「こんなふうに、ゆっくり歩くのって……久しぶりだね」

自然とこぼれた言葉に、涼介は歩みを合わせながら頷いた。

「そうだな。……でもさ」

彼はちらりと美香奈を見て、少しだけいたずらっぽく笑う。

「今日は、もう一つ君を驚かせたいことがあるんだよね」

その一言に、美香奈は思わず立ち止まり、瞳を丸くした。

「……え、なに?なにそれ?」

胸の奥がわずかに高鳴るのを、美香奈は自覚していた。
まるでプレゼントの包みを開ける前のような、わくわくとした気配が心を満たしていく。

「それは――あとでのお楽しみ」

涼介ははぐらかすように言って笑い、美香奈はくすぐったそうに眉を寄せた。

午後二時過ぎ。

街歩きの余韻を残しながら、2人は再びホテルへと戻ってきた。
エントランスを抜けてエレベーターに乗り込むと、涼介は何気ない顔で言った。

「そろそろ戻ろうか。ちょっと、準備があるから」

「準備……?何の?」

怪訝そうに首をかしげる美香奈を見て、涼介は肩をすくめながらも、にやりと意味ありげに笑った。

「まあ、俺が考えてることだから。心配しなくていいよ」

その口調は軽いのに、どこか自信に満ちていて――
不思議と、美香奈の心をふっと軽くした。

(なんだろう……でも、涼介の“サプライズ”って、きっとまた素敵なやつだ)

小さな胸の鼓動を抱えながら、美香奈は小さく頷いた。

「……うん、楽しみにしてる」

その笑顔に、涼介もどこか嬉しそうに目を細めていた。
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