【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。

ある週末の午後。
神谷宅のリビングでは、涼介がテーブルに広げた参考書を指差しながら、長谷川に熱心に説明していた。

「ここは、問題を読むときに引っかかりやすいから、設問文を先に読むクセをつけた方がいい。」
涼介が軽く赤ペンでラインを引きながら話すと、長谷川は真剣な顔で何度もうなずきながらメモを取っている。

「ふんふん……なるほどね。読む順番か……！」

その様子を、キッチンカウンターからそっと見守っていた美香奈は、湯気の立つティーポットにお湯を注ぎながら、ふと微笑んだ。

そこへ、同じくキッチンでお菓子の盛り付けをしていた美咲が、そっと美香奈に近づいてきた。
そして耳元で小さな声で囁く。

「ねえ、美香奈ちゃん。長谷川さんね、あんまり勉強得意な方じゃないから、最近すごく必死なの。」

「えっ、そうなんだ？」

美香奈が驚いて声を潜めると、美咲はふふっと笑った。

「でも、涼介に教えてもらうって言い出したのも自分からだったんだよ。あの人、なんだかんだで、ちゃんと前向きに努力するんだから。」

美咲の言葉に、美香奈は改めてリビングの二人を見る。
真剣な顔で問題集に向き合う長谷川と、そんな長谷川を時に厳しく、時に優しく導く涼介。

2人とも、同じ目標に向かって、一歩ずつ進んでいる。
そんな姿がとても微笑ましくて、美香奈は胸がじんわりと温かくなるのを感じた。

――着実に、力をつけていってほしい。
涼介も、長谷川さんも。

そう思いながら、美香奈はお菓子の乗ったトレーを手に、そっとリビングへと歩み寄った。