【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。
「起訴状朗読」

検察官が立ち上がり、起訴状の内容を静かに読み上げ始めた。

「被告人・中原孝志は、令和6年2月28日、東京都文京市に所在する被害者の住居に、
被害者の意思に反して合鍵を用いて侵入し――」

美香奈は無意識に手を握りしめていた。
あの夜の記憶が、音のないフラッシュバックのように、胸を締めつける。

検察官は淡々と続ける。

「さらに、被害者に対し、腕を強く掴み、口元を塞ぎ、無理やり体に触れようとするなどの行為を行い、
結果として、被害者に精神的外傷を与えたことに加え、左上腕部に皮下出血、頸部に圧迫痕を残す――」

真木がそっと、美香奈の背中に手を当てた。
涼介も静かに頷きながら、美香奈の表情を見守っている。

この瞬間、美香奈は――
“もう過去は取り戻せない”という現実と、
“それでも前に進む”という自分の決意を、
胸の奥で改めて感じていた。
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