【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。
それから数週間後。

再び、美香奈と涼介、真木弁護士は東京地裁立川支部へと向かった。
今日はいよいよ判決言い渡しの日。

法廷に入ると、かつてと同じように静かな緊張感が漂っていた。
被告人・中原孝志は弁護人とともに席に着き、憔悴した様子を浮かべている。

裁判長が入廷すると、場内がぴりりと引き締まった。

「主文。
被告人を懲役4年に処する」

その瞬間、美香奈は、息を詰めるようにして、両手をぎゅっと握りしめた。

判決理由が静かに読み上げられる。
ストーカー行為の悪質性、住居侵入、傷害、強制わいせつ未遂……
それぞれの罪の重さ、社会的影響、そして本人の反省の浅さが淡々と述べられていく。

「被害者が受けた苦痛と恐怖は深刻であり、加害者の行為は極めて悪質である。情状酌量の余地はなく、実刑は免れない」

冷静な声だったが、美香奈には、その言葉が心にじんわりと沁みた。

涼介は、美香奈の震える手をそっと包み込んで、力強く握り返した。

「終わったな」

美香奈は、目に涙をためながら、静かに頷いた。

真木弁護士も深く息を吐き、微笑んだ。

「……これで本当に、一段落だな」

裁判官が席を立つと、傍聴席の人々も一斉に立ち上がった。
廊下に出ると、美香奈は一度大きく深呼吸をして、秋の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

――これからは、前だけを見て生きていく。

そんな決意が、彼女の中に静かに、しかし確かに芽生えていた。
< 73 / 88 >

この作品をシェア

pagetop