【番外編】イケメン警察官に2人ごと守られて。
何もなかったふりをして、足早に事務所へ戻る。
けれど、心臓はずっとぎゅうっと握りつぶされたみたいに痛かった。
──ちゃんと、普通にしてなきゃ。
──平気な顔をしなきゃ。
そう自分に言い聞かせながら、デスクに向かう。
提出する書類をまとめ直し、パソコンに向かったが、
いつものようには指が動かなかった。
ちいさなケアレスミス。
誤字。添付ファイルのミス。
普段なら絶対にしないような確認漏れ。
「美香奈さん、これ、ファイル違ってます」
同僚に指摘されて、慌てて頭を下げた。
「ごめんなさい」と謝る声も、ひどく震えていた。
隣の席から、別の同僚がふと心配そうに視線を送ってくる。
(バレてる……)
たまらない気持ちになって、
ますます呼吸が浅くなった。
時計の針が進むのを、ただぼんやりと眺めながら、
美香奈は、今日一日が早く終わることだけを願っていた。