ぶどうジュースと夏の誓い


 効きの悪い冷房がぶおんぶおん鳴ってるこの店内。だけれど、時折、由比ヶ浜からの潮風がさあっと入るの。

「赤嶺さんって、兄貴と仲いいの?」
 清算を済ませた速水さんは、ぼそりぼそりとわたしに聞いてきた。スマホゲームに相変わらず目を落としてるけど、ちゃんとわたしに対する「質問」。

「仲良かったのは小さな頃。最近ね、すごくピリピリしてるよ。夕飯時とか」

 速水さんに愚痴を言っても仕方ないのにな。
 心に溜まってるものを吐き出さずにはいられなかった。

「関東大会ってプレッシャーなんだよね。わかるけど、まるで以前の兄貴じゃなくなったみたいでさ」

「まあー。仕方ないよね」

 意外にも、速水さんは兄貴の肩を持った。
 文句の一つでも言おうと思って彼をにらむと、速水さんは「目力《めぢから》。こわ」と言って柔らかに笑ってた。

 塾の時間が来たので、わたしたちは二階に上がった。
< 4 / 25 >

この作品をシェア

pagetop