ぶどうジュースと夏の誓い


「しおかぜ塾」は、午前8時から3時間の「集中講義」で今日も幕を開けた。講義の前半は再来年の受験対策なんだけれど、後半の一時間は「洋書」を読む時間を弁天先生が設けてくれてる。

 今日は「ナルニア国物語 ライオンと魔女」の中の一章、「Lucy looks into a Wardrobe」という章を「辞書なし」で意味を推測してみたよ。

「さすがにわかんねー。せんせ、この本全部読んだの?」
 男勝りの豪快な口の利き方をするのは丸井璃奈《まるい・りな》ちゃん。わたしや速水さんとは別の中学校の「学年一位」なんだ。

 うちの塾は、速水さん、わたし、璃奈ちゃんの三人しかいない。講師の弁天《べんてん》先生が海外漫遊の旅の合間に、その年ごとの「中学二年生」を気まぐれに教えてる塾だからね。

「もちろん! 『ナルニア国』は、ちょうどあなたたちの年齢で英語版を読んだよ! 未知の世界にワクワクしながらね! 全文読んでほしいくらいだけど、とりあえず、今日はプリントのあたりまで。みんなはどう? 伊月は? 英語得意だもんね!」

「なんとなく、ふわっとなら、伝わってきます」

 わたしが言うと、「伊月。そのセンスは大事だよー!!!」と、弁天先生は真っ白な歯を見せて笑った。
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