ぶどうジュースと夏の誓い
「いや。兄貴と同じことするなー。双子ってこわいなー。って。伊月ちゃん、さ」
まさかの「伊月ちゃん」呼び。
速水さんは、わたしに近づいた。香水みたいな、彼の少し甘い匂いがする。わたしの頭を彼はポンポンと優しく叩く。
「俺んちって、ペットボトルもろくに買えないくらい倹約精神にあふれてて、さ。毎日、氷たくさん入れた麦茶作って、水筒に入れてる。俺にはペットボトルって『贅沢品』なんだよね。ハンバーガー屋さんも、人生で三回しか寄ったことなくて」
いきなり、中程度に重い「告白」が始まった。速水さんは淡々と続けた。
「俺っていつもダルそうだと思う。正直、食べ盛りなのに、肉も魚も米も、周りに比べて全然足りてない。そういう『俺』だからさ。ペットボトル、ありがと。もらっておいて、小学生の弟妹と分けて大切に飲むよ」
「朔ー。お前、大変なんだなあ」
グスグスと鼻を鳴らして、璃奈ちゃんがわたしの代わりに答えた。速水さんは、璃奈ちゃんをちらりと見ると、「わたしに向かって」付け加えた。