幼馴染に彼女ができたけどなんで私が嫉妬されてるの?
「なによ。両手が塞がってたら、鍵もドアも開けられないでしょ」

「そうね。手伝ってあげて」

「すぐ戻るから。ほら、行くわよ。とりあえず、鍵は?」

「あ、ああ…」

家の鍵を渡すと、沙菜は先に靴を履いて、玄関のドアを開けた状態で待ってくれた。

「お邪魔しました」

靴を履いたオレは、もう一度そう言ってから三波家を出た。
そして、今度はオレの家の鍵を開けて、その状態で待ってくれる。

「サンキューな」

小さくそう言って、靴を脱いで家に上がった。

「竜の部屋でもう寝かせちゃうでしょ?」

なんと、沙菜は靴を脱いで上がってきた。

「入るのか!?」

思わず裏返った声が出る。

「だって、戸が閉まってたら開けるの大変でしょう?」

そう言って、トントンと軽い足音を立てて沙菜は先に階段を上った。
仕方なく、オレも竜を担いだまま2階に上がる。
竜の部屋に入ると、ベッドの掛け布団を開いた状態で沙菜が待っていた。
竜をベッドに下ろすと、沙菜がそっと布団をかける。
相変わらず竜は爆睡だ。
竜の顔を見て、沙菜は優しく微笑んだ。
その横顔に、思わず見惚れるオレ。

「じゃ、帰るから」

パッと沙菜が立ち上がってオレを見たから大いに慌てた。

「ああ」

そう答えることしかできないオレ。
さっき竜に見せた笑顔とは正反対の、無表情な沙菜。
オレの横を通り過ぎた。

何か言わなければ。
そう思うのに、声が出ない。
どこまでオレはヘタレなんだ。
結局何も言えないまま玄関まで来てしまった。
さっと靴を履く沙菜。
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