幼馴染に彼女ができたけどなんで私が嫉妬されてるの？
「ありがとな」

やっと言葉が出たけど、本当に言いたいことから程遠い。

「助かった」

「別に、竜のためだから」

冷たく短くそう返される。
そうだよな…。
別にオレを手伝ってくれたわけじゃない。

「それでも！…ありがとう」

だけど、それでも良かった。
オレに喋りかけてくれただけで。

沙菜は結局オレの顔も見ずに玄関から出ていってしまった。
バタン、と戸が閉まる。
オレは一人取り残された気分になった。

幼馴染なんて儚い。
どちらかに恋人ができれば、その関係はあっけなく崩れてしまうんだ。
最初に彼女を作ったのはオレ。
それが沙菜との関係を変えるきっかけになるなんてな…。
最初からわかっていれば、彼女なんかいらなかった。

いや、違うか…。
オレが彼女を作らなくても、沙菜に彼氏ができれば、それで変わっていたんだ…。

どうして沙菜を好きになってしまったんだろう。
ずっと、友達で、そして家族でいたかった。
沙菜の笑顔を、当たり前のように見ていたかった。
沙菜に彼氏ができれば、沙菜の父ちゃんみたいに心配して、それで祝福もしてやりたかった。

今だって、沙菜が幸せなことは、オレの幸せだ。
だけど、恋愛だけは、オレ以外の男とだなんて、考えるだけでおかしくなりそうだった。

無邪気に遊んでいたあの頃、オレも沙菜も幸せだった。
今は、こんなにもギクシャクして、あの頃が夢のようだ。
何もかもが変わってしまったんだ。
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