タイプではありませんが
12.意外な一冊
「おまたせ」
駅に迎えに来た星野は楓の手をさり気なく繋ぐ。この行為にもやっと慣れたところだ。
星野の家の最寄駅に来るのは二回目だ。
楓とは同じ路線だが、反対方向の星野の最寄り。
地元に帰る時に電車で通り過ぎることはあっても降りることはなかった。
「わぁ」
小さく声を上げて、はたと気づき星野を見やる。
睨むような目つきになっている楓の視線を軽く躱す。
彼の顔からは楓の声に気づいたのかどうか判別がつかない。
気づいているのか、気づかなかったのか。
ただ、楽しそうに楓の様子を見て微笑んでいるだけだ。
楓が星野のことを気にしているのには理由がある。
すっかり東京の名所になったスカイツリーがそびえ立っているのだ。
スカイツリーは星野の家は駅から少し北上したところにある。
少しの距離だが大きな建物に向かって進んでいくのだ。
どの角度からもスカイツリーが見える。
背が高いからオフィスから見えることはあっても間近で見たことのない楓には圧巻だった。
電車を降りてスカイツリーに向かって歩くのは、ワクワクする。
そんなことを前回うっかり星野に伝えると、嬉しそうに笑って彼はこういったのだ。
「じゃあ一緒に住む?」