タイプではありませんが

16.最後のデート


「乾杯」
 星野が差し出したワイングラスと自分のそれを合わせた。
 グラスの高さは同じ。
 どちらがグラスを下にするか一悶着あったあと、星野の「接待じゃないんだから」の一言であっさり解決する。
 そんな風に始まったディナーだが、美味しい料理のおかげが、それとも久々に語り合ったからか。
 時間を忘れるくらい話は弾む。
「やっぱりいいな、山下と話すの。楽しいわ」
 星野の言葉に楓も同意する。

 星野との会話は楽しいのだ。
 自分とは違うバックグラウンドを持っているからか、同じものを見ていても意見が違うことが多いのに、偶に合致するときもある。
 それがまた刺激になって、どんどん話をしたくなって。
 今日だって、同じ料理を食べているはずなのに星野は味や質に、楓はお皿や盛り付けに注目していた。
 お互いの着目点が違うから、同じテーマでも話が尽きないのだ。

 このままずっとこの関係でいれたらいいのに。
 そう思う気持ち以上に、嫉妬心は強く、なかなか去ってくれなかった。
 星野がどんな表情をするのか、予想つかない。
 もう二度と気軽に話すことができなくなるかもしれない。
 それでも、自分から言わないと。
 デザートと食後のコーヒーが出てきたタイミングで、楓は切り出した。
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