タイプではありませんが

 きっとそこは、居心地がいい。
 身長も高く、しっかりしているように見られる楓にとって、元彼にもされたことがない女の子扱い。
 星野はそんな楓を愛してくれて、ちゃんと()()にさせてくれる。

 ある意味望んでいた関係だ。
 なのにいざ希望が叶うと、わかってしまったのだ。
 欲しかったけど、今このタイミングじゃないんだ、と。
 病気と異動で自尊心がグラグラしている今、彼の気持ちを受け入れるのは、逃げだと。
 ここで甘えるのは楽だけど、それを選べばきっとこの先星野に変な遠慮が出てしまう。
 苦しいときに救ってくれたから、と。
 それは恋ではない。依存だ。

 だから、楓は決断することができた。
 星野の愛を受け入れないことを。



「早いね」
「そう?」
「うん。俺が先に来ようと思ったのに」
 向かいに座った星野の格好を見て楓は気付かれないように息を呑んだ。
 会社では着ないパーティーにでも行くようなドレスアップした姿に見惚れてしまう。
「似合ってる」
 楓が言えないことを臆面もなく言う星野。
「ありがとう。ホッシーもそのジャケット、よく似合ってる」
 いつもならそっけなくしてしまうけど、今日は最後だ。
 素直に言葉に出す。
 驚いたように眉を上げた星野は、嬉しそうに破顔した。
「ありがとう。嬉しいな」
 三秒ほど楓の顔を見つめた星野はゆっくり立ち上がった。
「そろそろ行こうか」
 エスコートするために差し出された手に、楓はそっと自分の手のひらを重ねた。



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