タイプではありませんが
モヤモヤするのはきっと、楓が元カレにされていたことを星野に対してしてしまっていたから。
星野にかつて元カレと付き合っていたときの自分を重ね合わせる。
ワガママで振り回して、都合のいい関係で居させた。
元カレにちゃんと自分の本当の気持ちを伝えたかった。
星野の本音を聞いてあげたかった。
今更考えても、どうしようもないことだけど。
楓はそっと手紙を元に戻した。そして時計を手に取る。
楓の好きなトノー型のデザインだ。日付も表示されるタイプ。
そっと腕にはめてみる。
時計部分がクラシカルだからか、赤みが強い茶色の革ベルトでもスッと肌に馴染む。
「本当、隙がないなぁ」
こんなデザインの時計が一本欲しかったのだ。
今持っているメタリックベルトの時計と対比するようなフェミニンなデザインのもの。
なかなか好みのものと出会えなくてずっと探していたのに。
彼はあっさり見つけてくる。
楓よりも楓のことを知っているかのように。
楓が今まで出逢った男性でも三本の指に入るくらいいい男。
逃した魚は……。
楓はそこまで考えて首を振った。
星野との人生は重ならなかった。
ただ、それだけ。
未練なんか、ない。
……多分。