タイプではありませんが


「……忘れる約束は?」
「なんのこと?」
 声を押し殺した楓の問いに、とぼける星野。
 星野を見る目が鋭くなる。
 ドウドウ、と言いながら両手を上げる星野は楽しそうに口を開いた。
「結構前から好きだったんだ」
 これもどこかで聞いた台詞。イライラが募る楓に星野は更に付け加えた。
「俺、山下に告るの初めてだよね? ……まぁ二年くらい前に飲んだ勢いで言ったことあるけど、華麗にスルーされたし」
 なんで怒っているの? というように星野は首をかしげる。
 誤魔化そうとする星野を追求しようと楓が口を開く前に。
「俺さ、十一月くらいから山下が異動するくらいの間のプライベートの記憶あんまりないんだよね。すごく楽しかったような気はするんだけど、何か忘れちゃったんだ」

 一瞬星野が何を言っているのか理解するのを脳が拒む。
 え? 何言ってるのこの人?
 成人男性が小首を傾げても可愛くないし。いや、イケメンだから似合ってはいるけれど。
 ヤバい論理を展開しようとしている星野に楓は思わず後ずさりしてしまう。
 実際には椅子に座っていたからできないけど。
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