タイプではありませんが
6.恒例の
年の瀬は、慌ただしくすぎる。
有り難いことに、星野とのキスも腕に抱かれた時の力強さも会社では思い出す暇がなかった。
その代わり、家では何度も星野の胸板の感触を振り返る。
着痩せするタイプなのか、コート越しでもわかった筋肉質な胸板。
楓がマッチョがタイプといったから鍛えたのだろうか。
……いや、違う。
ボディビルダーのように見せるための筋肉ではなく何かスポーツをしていたのであろう、しなやかなもの。
あの筋肉は一朝一夕では身につかない。
そして、意外と肩幅が広いことに気づいた。
目線が同じくらいだからか、今まで気にしたことはなかったのだ。
「触りたい」
自分の声にぎょっとする。
星野に対してそんな欲求を持ったことを。
これは恋ではない。
ただの欲だ。自分では持ち得ない、男性の固くて逞しい筋肉に触れたい、包まれたいという願望。
きっとバセドウ病の数値が下がってきて、今までどこかにいっていた本能が戻ってきているだけ。
前の彼氏にフラレたのも、夜の相手ができなくなったのも一因だ。
だから今、星野の体が魅力的に映るのは、病気のホルモンで抑えられていた欲が薬がきくにつれてムクムクと蘇ってきただけ。