タイプではありませんが



 キスしてる。

 ただそれだけ。
 重なってみると、さっきまでの混乱はどこにいったのか。
 楓の心はやけに平穏だった。

 やっぱり星野に男を感じないのに。
 でも、すごく優しくて気持ちいい……。それに身長差がないからキスしやすいな。
 思わず目を瞑って星野のキスを受け止める。

 離れる時も丁寧だった。
 名残惜しそうにゆっくりと顔を離した星野は再度礼を言うと楓を抱きしめた。
「最高の誕生日プレゼントだ。ありがとう」

 楓はドクリと心臓が音を立てたのに気づいた。
 予想していたよりも星野の胸板が厚かったからだ。思ったより力強い腕の力で抱きしめられる。


 意外とホッシー筋肉あるんだ。この腕なら……。


 楓はその先を考えるのを首を振って中断する。
 星野の胸に手を当て体を離すと、早口にいった。
「送ってくれてありがとう。誕生日おめでとう。終電なくなるよおやすみ」
 踵を返すと足早にマンションのエントランスに入っていく。
 星野がどんな顔をしているのか知りたかったが、楓が後ろを振り向くことはなかった。



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