タイプではありませんが
7.帰省
星野に翻弄された日から数日。自宅の片付けを早々に終えた楓は、迷いに迷って、結局いつも通り、大晦日に帰省することにした。
「なんでいつもそんなギリギリなのよ」
電話口の母からは恒例のように文句を言われたが、新宿のデパ地下にしか売っていないスイーツをたんまり買うことで許しを得る。
楓の実家は千葉といえども房総半島のほうだ。車で行くには東京の道は怖い、かといって電車は不便といい、なかなか上京しない母にとっては、テレビで見る東京のデパ地下スイーツは極上の土産になる。
二十八年間娘をしていたら、母の小言を黙らせる方法も熟知している。
案の定。
「あらっ!嬉しい。わかったわ。近所の人にもお渡しするから……」
次々と商品名を言う母親に、楓は慌てて静止をする。
「あとで欲しいものと数書いて送って。ちゃんと買ってくるから」
どれだけ買わせるつもりだろう。出てきた商品名にゲンナリしつつ、楓は母の話にしばし付き合って電話を切った。
「ふぅー」
深いため息が漏れる。
悪い人ではない。だけど、少しだけ苦手なのだ。
母も、地元の空気も。