タイプではありませんが

 楓もまた、星野のようなスマートで自分にはない提案ができる営業スタイルに一目置いていたからだ。
「私はホッシーみたいにセンスないから泥臭くやってただけだよ」
「それができる山下が凄いの。今置かれている状況は本意じゃないやろうけど、俺は山下が営業事務として補佐に入ってくれてめっちゃ助かってる。今までの自分では思いつかない提案も出来ているし。ここしばらく成績がいいのは山下のおかげでもあるの」
 鼻の奥がツンとする。認められている、それだけで今の楓には響く。
「待ってるからさ、病気が落ち着いたら戻ってきてまた一緒に競い合おうよ」
 今一番ほしい言葉を、何故彼はアッサリくれるのだろう。
「……負けないからね」 
「臨むところ」
 楓の強がり。だけど星野は笑って受け止める。

 病気を治して、また営業として立てるのかはわからないけど。
 楓はここ数ヶ月抱えていた胸のつっかえが、少し軽くなったのを実感していたのだが……。

「またしようね、キス」
 店を出る前にそっと囁かれた言葉に楓は真っ赤になる。
 そんな楓をみて星野は嬉しいそうに声を上げて笑うのだった。


< 40 / 166 >

この作品をシェア

pagetop