タイプではありませんが


 仕事の話はこれで終わり、と星野が告げたのは、彼がビールからサングリアに切り替えた時だった。
 酒の弱い楓はトニックウォーターで喉を潤しつつ、料理を味わっていた。
 アツッと言いながらアヒージョを頬張っている楓に、星野はおもむろに尋ねた。
「なんで()()()()()()?」
 星野の出身は四国だったか九州だったか。少しだけ、西の訛りが残る言葉で問いかけた。


 星野の尋ね方に楓は少し慰められた。
『振られ()んや』と『振られ()んや』
 たった一文字だが、その一文字に星野の優しさがつまっていた。
 何故男のほうが振ってるんだ、振るなら楓のほうだろ、と。

 ガーリックオイルで熱々になっているマッシュルームを飲み込んだ楓は、トニックウォーターを飲み干すとお代わりを頼んだ。
 同じものを運んできた店員が去ると、ゆっくり口を開いた。
「……つまらないんだって」
 ため息と共に吐き出した声は楓が予想していたよりも悲壮感に溢れていた。
「前みたいに休みの度に出かける体力が今はないしね。アクティブな彼だったから仕方ないよ」
 さっきの悲哀さを打ち消すようにから笑いしながらいう楓に、星野は笑ってはくれなかった。
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