タイプではありませんが

「ホッシーがそんな顔しないでよ。大丈夫だって」
 楓は星野の左腕を軽く叩く。
「ほら、食べよ!フラれても食欲だけはあるんだー。……ねぇ、パエリア頼んでいいよね?」
 星野は黙りこくったまま難しい顔をしている。そんな星野の視線から逃れるように楓はメニューを手に取った。
「どれにしようかなー」
 一向に返事がない星野をよそに、楓はパエリアといくつかツマミになるものを頼んだ。

 オーダーを聞いた店員が去っても星野は無言だ。その空気を打ち消すように楓は話しかけ続けるが、星野は何かを考え込んでいるように顎に手を当て、眉間にシワを寄せたままだ。

 考えている?
 いや、違う。

 これは何か迷っている時の顔だ。何か大きなことを決断するときの顔。
 同期として、そして少し前までは同じ営業として、何度も近くで見た。
 難題にぶち当たった時になんとか糸口がないか必死に思考をしているときと同じ顔だ。
 楓は邪魔しないようにそっと口を噤んだ。



「山下」
 星野はやっと顔を上げた。どうやら何か決めたみたいだ。
「はぁい」
 腑抜けた声で返事をした楓に、星野は真剣な顔で言い放った。
「俺と付き合わん?」
「へっ?」
 楓は星野の顔を見ながら、あんぐり口を開けて固まった。


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