タイプではありませんが
よかった、と楓は胸を撫で下ろした。別れた後、哲と再会するのは初めてだ。
振ったのは楓だ。気まずい気持ちはあるが、一緒にいた時とは違い、優しく笑う彼に心の底から祝福の言葉を伝える。
「お幸せにね。っていうか言わなくても幸せいっぱいだね!よかったぁ」
哲も楓が本心から言っているとわかったのだろう。安心したように話しかける。
「ありがとな。かえ……山下も元気そうでよかった。しばらくこっちいるの?」
さすがに妻の前で名前で呼ぶのは憚れたようだ。名字で呼んだ哲に楓は答える。
「明日には帰るよ」
「忙しいな。たまにはゆっくり帰ってきて同窓会に顔出せよ。毎年二日にやってるから」
哲と別れたこともあり、社会人になって足が遠のいていた同窓会。まだ続いていたのに驚いた。聞くと、集まるのはクラスの半分くらいだが、未だに同じ場所――同級生の実家の店――で開催をしているらしい。
「わかった、わかった。来年……じゃないや、再来年は顔出すね」
再来年、自分が行くかどうかわからない形ばかりの返事だったが、哲は本気にしたようだ。
「おう、待ってるわ。直前に地元組の誰かから連絡入れるから必ず来いよ」
話の区切りがついたところでお互いに良いお年を、と言い合って別れる。
哲の幸せそうな後ろ姿をみても未練が全くない自分によかったと胸を撫で下ろした楓は、自分がコンビニに何を買いにきたのかすっかり忘れてしまった。
思い出したのは実家に帰ってからだ。
手ぶらでコンビニから帰ってきた楓にまだ歌番組に夢中になっていた両親に気づかれなかったことが唯一の救いだった。