タイプではありませんが


 楓はグルグルする頭で考え込んでしまった。

 沈黙を破ったのは、今まで静かに楓と琴美の会話を聞いていた田中が口を開いた。
「星野に全部話してみたら?」
「え?」
「俺等が気づいてるんだから、星野はうすうす感づいているでしょ。告白を受け入れない理由を」
 思い当たるフシはあった。断った時の理由に、意外というように驚いたり、諦めが悪かったり。
 いつもと違う星野。その理由が楓に惚れているからだけでなく、自分でも気づかなかった心の奥底の気持ちまで敏感に感じていたとしたら……?

 真っ赤になっていた楓の顔から表情が抜け落ちた。
 数回深呼吸する。元営業だ、繕うことは得意だ。
 少しだけ時間をおいて気持ちを整えたのだろう。
 口を開いた彼女は、よく知らない人が聞くといつも通りだった。
「……そうかな?」
 だが、少しだけ下がったトーンで琴美と田中には伝わった。
 冷静を装っているが、かなり動揺していることが。

 これは星野、チャンスじゃないか?
< 65 / 166 >

この作品をシェア

pagetop