タイプではありませんが
2.いつもの日常
「おはよう、山下」
後ろから声をかけられて、楓は引きつった顔で振り向いた。
自分とは対照的な、満面の笑みを浮かべた星野。
その笑顔が今は腹立たしい。
「……おはよう」
絞り出すように返事をした楓に星野は追い打ちをかける。
「返事はいつでもいいよ。でもこれからはどんどんアピールはしていくから」
憎たらしいくらい爽やかな笑みを浮かべている星野をよそに、楓は足早に事務所に飛び込んだ。
昼休み、自席でお弁当を食べながら、楓は星野のことを考えていた。
楓の目の前は営業部の席だが、星野を初めとする営業社員はほぼ外出しているから閑散としている。
逆に後ろは総務や経理といった事務方のデスクのため、賑やかだ。
同じ仕事をしている他の二人は外にランチを食べに行ったため、今営業事務のデスクにいるのは楓一人だった。
左手でパソコンニュースを流し見しながら右手でご飯を口に運ぶ。
行儀が悪いのは重々承知だ。
だが、ご飯時にニュースを見る癖は営業の時から抜けない。
スマホとタブレットからパソコンの画面に変わっただけだ。
だが、先程から星野のことがよぎり全然頭に入って来ない。