嫌われているはずが、まさかの溺愛で脳外科医の尽くされ妻になりまして
エピローグ
【今から帰る】

 家で夕食の準備をしながら夫の帰りを待っていた美琴は、彼からのメッセージを見て目を細めた。今日は急患などの対応はなく時間どおり帰宅できるようだ。

「よし じゃあ、メインのタコを切っておかなきゃ」

 冷蔵庫を開ける独り言も自然と明るくなる。

 あれから約二週間、表面上は以前と変わらない生活をしている美琴だが、裏ではいろいろな状況が動いていた。

 想いを通わせた翌週、遥臣の希望で美琴は彼と共に再び実家を訪れた。
 正直バツが悪かったが、話をするいい機会だと思ったのだ。

 智明にされたことや、遥臣と夫婦のふりをした経緯を打ち明けると、案の定両親は腰を抜かすほど驚き、『なんでもっと早く言わなかった』と怒った。それは当然なので、美琴は素直に謝った。

 遥臣は『彼女に怪我をさせてしまったのは、油断していた僕の責任です』と頭を下げた。

 智明を篠宮家に引き取らせたあと、瀬戸家はすぐに弁護士を通じ、篠宮家に正式な謝罪としかるべき対応を求めた。証拠もしっかりと添えると、慌てた先方から全面的な謝罪の連絡が入った。
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