最弱スキルで転生した俺、気づけば英雄になっていた。
「……つまり、森が枯れかけてるから、なんとかしてこいと?」

ギルドに呼び出された俺は、受付嬢の持ってきた依頼書を読み返して目をこする。

「うんっ♪ なんか“地脈のバランス”がーとか、“魔素の循環”がーとかって……」

アベルは楽しそうに依頼内容を読み上げるが、俺にはさっぱりだ。

「で、それを俺らが?」

「だって、最近活躍中のチームじゃーん! なんか、緑とか生やせそうな感じじゃーん!」

「俺のスキル、“微風”なんだけど?」

「風が吹けば、種も飛ぶっていうし? つまり、適任!」

「詭弁すぎるだろ!?」

横ではネーヴェが無言で頷いている。いつもの黒いドレスのまま。

「ネーヴェ……わかってる?これ、なんか大事な依頼っぽいよ?大丈夫?」

「森……きらいじゃない。葉っぱ、ふわふわ……」

「それは安心材料になるのか、微妙なんだけど!?」

というわけで、俺たちはまた森に来た。

でも前に来たときと違って、木々の色が薄くて、ところどころ枯れかけている。

「わー……元気ないねぇ、森さん……」

アベルは空を見上げて、いつになく神妙な顔。

「うーん、魔素が枯れてる……かな?ここ、なんか……ぴりぴりする」

「やっぱ魔法でなんとかするしかないか……?」

ネーヴェが静かに一歩踏み出すと、白い髪が風に揺れて、小さく囁くように言った。

「……“雪精の祝詞”」

次の瞬間、彼女の手からふわりと銀の光があふれ、森の土をやさしく包みこむ。

「おおっ、ちょっと地面がぷるぷるしてる!すごい!さすがネーヴェ!」

「ちょ、ネーヴェ、それ大丈夫なやつ!? 森が……ぷるぷる!?」

「……ふわふわになる」

「ふわふわじゃなくて、なんかスライム的な……!」

ネーヴェの魔法はとりあえず成功(?)し、地面がほんのり潤ってきた。

アベルも負けじと、両手を掲げる。

「よぉし、私もいくぞー! 光合成パワーーー!!」

「いや光合成は植物の仕事!!」

「でも、なんか“陽光魔法”って名前っぽくない?」

「名前だけならかっこいいが内容は謎!!」

ドゴォォン!

突如、空から光が降り注ぎ、枯れ木の一本が“逆に焦げる”。

「うわああああああああ!?!?」

「……太陽さん、元気すぎた」

◆結果:

・森の地面がふわふわゼリー状になった
・木は一部焦げたが、別の木には新芽が出た
・クレムは微風スキルで葉っぱを集める係(役に立たない)
・ギルドには「効果ありました(?)」という報告書を提出

帰り道。

「ふわふわしてたね、森!」

「違う意味でな……」

「クレムもいい風、吹かせてたじゃん!」

「いやもう最後の方、俺はただの風圧担当だったけどな……」

「でも、森も少し元気になってた。わたし、また来たいなぁ」

ネーヴェがポツリと、ぽつりと呟いた。

「……森の声、聞こえた。ありがとうって、言ってた」

俺は思わず振り向く。

……あのネーヴェが、こんな顔をするなんて。

静かで、優しくて――ちょっとだけ、寂しそうな。

(やっぱり、ネーヴェには……何か、ある)

そう確信しながら、俺たちは森をあとにした。
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