海に凪ぐ、君の名前
父さんは、俺の話を聞いて、一拍置いて「いいだろう」、と言った。

思わず、え、と声が出る。

父さんは俺を見る。社長の目だ。

でも、その奥にどこか柔らかさがある。

「お前の言ったそれが、彼女のためになるのなら構わないさ」

心臓が、どくんと鳴った。

父さんは少しだけ口角を上げた。

『彼女のためになるのか』。その言葉が、胸の奥で静かに響く。

彼女が、俺のしたことをどう思うかは分からない。

むしろ、迷惑だと思われるかもしれない。怒るかもしれないし、困らせるだけかもしれない。

それでも。少しだけ、彼女の持っている重たい荷物を軽くできると思う。

あいつは、なんでも一人で抱え込む。

平気そうな顔をして、笑って「大丈夫」って言う。本当は全然大丈夫じゃないのに。

俺は、彼女の重荷を全部背負うなんてことは言えない。

でも、隣で持つことくらいなら、できる。

半分じゃなくてもいい。少しでも、軽くできるなら。
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