この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「十分頼ってるよ。慶介にはいつも助けてもらってるから」
「全然足りてないんだよ。彼氏にくらいちゃんと甘えろ」

 明日香は『彼氏』というワードに思わず反応してしまう。

「っ、彼氏」

 慶介は時々二人の関係を言葉で表してくるが、それをされると偽りを超えてしまいそうで怖い。言葉につられて、本物の恋人として接したくなってしまう。

 明日香は、これは偽物の関係なのだからと、己を律しようとするが、すぐにその思考を止められる。

 慶介からの甘い口づけに、思考をすべて奪われてしまった。

「彼氏だろ。こんなことできるのは」

 線引きをしてくるくせに、こうして時々踏み込んでもくるから困る。

 明日香の想いは本物だから、こちら側に歩み寄られると、本音が漏れ出してしまう。

「うん……ねえ、慶介」
「ん?」
「アイスもう一本分くらい、こうしてたいな」

 軽口で保険をかけながらも、甘えたことを口にする。慶介の体に頬を擦り寄せ、あと少しだけ抱きしめ合いたいと望めば、明日香を抱きしめる彼の腕がわずかに強くなった。

「いいよ」

 優しい囁き声が全身に響く。慶介からのその言葉が好きでたまらない。

 明日香をいつでも受け入れてくれるその優しさに、明日香の心は満たされる。恋人としての距離が許されているのだと。

 明日香は本物と錯覚してしまいそうなほど甘い偽りの愛に、しばらくの間、酔いしれていた。
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