この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「赤の他人に継がせるのは難しくても、如月家に入れば、継がせやすいだろうってことなのよ。明日香が継いだとしても、結婚すれば自分も関わることができるからって」
「……確かにそれはそうかもしれないけど」
「明日香とは年齢の釣り合いも取れているし、同じ目標を持つ者同士、気も合うかもしれないからって仰ってるの」

 言いたいことはわからなくはないが、やはりまったく知らない人との結婚の話をされても戸惑いしかない。

「いや……ええ……」
「もちろん明日香が嫌ならちゃんと断るわよ。でも、明日香にそういうお相手がいるって話は聞いたことないし、あなたもうちの跡を継ぎたいなら悪い話ではないと思ったのよ。どう? お見合いしてみない?」

 母にはこれまで恋人がいたことも、今、慶介と付き合っていることも話していない。今までに母から恋人の存在を訊かれたこともない。

 おそらく将人への恋心はばれていただろうから、明日香の恋愛事情に関してはそっと見守ってくれていたのだと思う。

 将人が結婚することは母にも伝わっているし、もしかしたらそういう心配もあって、見合いを勧めているのかもしれない。

 なんともいえないタイミングでの見合い話に明日香は一瞬黙る。

 もしもあの場面を見る前に、この電話をもらっていたならば、明日香は迷いなく断っていただろう。だが、慶介の気持ちがまだ奈菜にあると気づいた今は迷いが生じて、『はい』とも『いいえ』とも言えない。

「……突然、お見合いって言われても」
「今すぐに返事はしなくていいから、少し考えてみてくれる?」
「……わかった。考えておく」

 今の明日香にはそれしか言えなかった。慶介を好いている以上躊躇いなく承諾はできないが、慶介から離れることを考えるならば、それはまたとない機会だと思ってしまったのだから。

「明日香。お見合いしたとしても、合わないなと思ったら、そのときに断っても大丈夫だからね。気軽に考えなさい」
「うん、わかったよ」

 そう返事しながらも、今の状況では気軽に考えることは難しかった。
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