この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「ふっ、なんだよ。そんなに顔赤くして」
「だって、両想いって……」
「ようやく自覚し始めたか。でも、まだ足りないな。もっとわからせてやる」

 慶介はそう言ったかと思うと、なぜか大きく息を吸い、海に向かって叫び始めた。

「明日香が好きだー! 世界で一番愛してる!」
「ちょっ!? やめてっ! 恥ずかしいでしょっ……!」

 慌てて慶介の口を押える。だが、すべて言ってしまった後だからなんの意味もなかった。

 周囲を見渡せば、わずかばかりいた通行人がなにごとかとこちらを見ている。

 恥ずかしくて顔を両手で隠せば、慶介にその手をどかされ、顔を覗き込まれた。

 恐る恐る視線を合わせてみれば、驚くほど優しい瞳で見つめられる。

「好きだよ、明日香。誰よりも愛してる。がむしゃらに前に進んでいくところも、人に頼れない不器用なところも、うまそうに料理を食べるところも、大胆に迫ってくるところも、全部好きだ。本当に愛してる」

 偽りではなく、本当の愛の言葉が、胸に染み渡っていく。ゆっくり、ゆっくりと全身に広がり、明日香を強い歓喜へと導く。嬉しさを抑えられない。

 明日香も溢れんばかりの彼への想いを言葉にして送り出す。

「私も……私も慶介が本当に好き。冷静に物事を見極められるところも、意外に情熱を持ってるところも、ちょっと意地悪なところも、本当は誰より優しいところも、全部好き。本当に愛してるの。すごく、すごく好き」
「ん、知ってる。明日香も覚えとけ。俺が好きなのは明日香だけだって」

 もうわかったと頷く。そうすれば、慶介は嬉しそうに微笑んでから、明日香に軽いキスをしてきた。

「見られるから……」
「見せつければいい。俺たちの愛は本物だって見せつけてやれ」
「え、いや、ちょっと待っ――」

 強引に唇を塞がれる。強く腰を抱かれていて、離れられない。恥ずかしくてたまらないのに、やめてほしくないと思う自分がいた。

 唇が離れると、意地悪な顔をした慶介が目に映る。明日香は照れ隠しでつぶやく。

「変態」
「なんとでも言え。今の俺たちにはこれが必要なんだよ」

 もう一度重なった唇は、どんな菓子よりも甘くて、明日香はうっとりとそのキスに酔いしれた。
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