この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「はあ!? なんで俺が」
「だって、穂高なら絶対変なことしないし、いいやつだってわかってるし、お互いの事情も知ってる。これ以上の適任者はいないでしょ」

 慶介に恋愛感情はないが、その人柄は好いている。口が悪いところはあっても、友人である明日香を時に助け、時に叱り、いつも正しく寄り添ってくれる。この男以上に信頼できる相手などいない。考えれば考えるほどいいアイデアだと思える。

 それに少しだけこの男を巻き込みたいという欲もあった。いつも冷静で飄々としているこの男が面白くなくて、自分と同じところまで引きずり出してみたいと思ってしまった。

「いやいや、なんで俺なんだよ……」
「どうせ穂高は誰とも付き合う気ないんでしょ? だったら、試してみてもいいと思わない? 好きになれたら儲けものだし」
「それ、意味わかって言ってんのかよ。本当に好きになったらどうするんだ?」
「希望が持てる。両想いになれるのが一番いい結果だけど、どっちかが心変わりするだけでも今後の可能性が広がるでしょ。また誰かを好きになれるかもしれないって」

 二人の間に愛が芽生えなくともいい。ただ可能性が欲しいだけ。違う誰かに恋をする可能性さえあればいいのだ。

 そうすれば、この苦しい片想いから抜け出せるのだから。

 明日香の切実な思いが伝わったのか、慶介の表情は真剣なものへと変わる。
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