この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「如月さんがリーダーに選ばれるなんて、絶対に贔屓されていますよね」
「本当に信じられない。あの規模の仕事なら私がやるべきでしょ」
「そうですよ。絶対に矢沢(やざわ)さんがやるべきです」
「私もそう思います。如月さんに任せるのは間違ってますよ」

 またかと慶介は小さくため息をこぼす。

 会話をしているのは同じ部署の矢沢とその取り巻き連中だ。矢沢は慶介たちの二つ上の先輩にあたるが、彼女はなにかと明日香を目の敵にしているのだ。

 おそらく後輩である明日香に仕事で追い抜かれたことが気に入らないのだろう。こうして明日香の悪口を頻繁に言っている。

「どうせ部長にも色目使ってるんでしょ。だから、あの子ばかり優遇されてるのよ」
「うわー、やってそう。あの人いつも違う男と歩いてますもんね。ビッチすぎるでしょ」
「それで仕事ができますって空気出してるの痛すぎ。ひどい勘違い女ですよね」

 あまりにひどい内容に、強い怒りを覚える。明日香が色目など使うはずがない。長い片想いに苦しんでいる明日香がそんなことできるはずないのだ。

 普段は矢沢たちがなにか言っていても基本的に関わらないようにしているが、今日は我慢が利きそうにない。自分が庇うようなことをすれば、余計に明日香への風当たりが強くなるとわかってはいるが、ひと言物申さなければ気が済まない。

 慶介は矢沢たちがいる方へと足を踏み出す。

 しかし、その歩みはたったの数歩で止められてしまった。

「っ」

 慶介の背後から現れた明日香がにこっと笑ってから、慶介よりも先に矢沢たちの前にその姿を見せた。
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