この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「好きだ」

 心臓が強く脈打つ。下の名を呼ばれたとき以上に、激しく動揺してしまう。

「っ……また不意打ち」

 いつもよりも明らかに鼓動が速くなっている。慶介からの真っ直ぐな視線も落ち着かない。

 明日香は手の平で胸を押さえながらつぶやく。

「ちょっとやばいかも」

 初めての感覚に、明日香は戸惑う。これまで恋人に好きだと言われても、こんなふうにドキドキとしたことはなかった。いつも申し訳ない気持ちが勝ってしまって、苦しさの方が強くなっていた。

 でも、慶介に対してはその申し訳なさを感じる必要がないからか、好きという言葉がダイレクトに伝わってきて、胸が疼く。今までの恋人よりも、遥かに恋人らしい空気が生まれている。

 杉崎で言い合ったときはなにも感じなかったのに、今日はなぜかしっかりと心が動いている。

 海を前にいい雰囲気になっているからか、恋人として少しは意識していたからか、あるいは、今日一日で慶介の魅力を再認識したからか、ときめきに近い感覚を味わう。

 慶介から言われただけでこうなるなら、自分から口にしたときはどうなるのだろうか。

 明日香も慶介にその言葉を言ってみたくてたまらなくなった。
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