この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「だから、なんでもかんでも入れるなって言っただろ?」
「なんでもかんでもは入れてないってば」
「でも、これを抜いたら格段によくなっただろ?」

 慶介の言う通りなだけに言い返せない。

「うっ、それは……仰る通りです」

 殊勝な態度で認めれば、慶介はニッと笑う。

「如月はセンスがいいんだから、雑なブレンドはするなよ。もったいないだろ」

 この男は憎まれ口を叩きながらも、こうして明日香の仕事ぶりはちゃんと認めてくれる。だからこそ、彼の意見にも素直に耳を傾けようと思えるのだ。

 なんだかんだで信頼できるいい同僚だと思っている。

「私がおかしなことをしても、穂高がちゃんと指摘してくれるでしょ? だから、私は冒険するくらいでちょうどいいの」

 明日香と慶介のやり取りを見ていた先輩がしみじみとした表情でつぶやく。

「なんだかんだでお前らはいいコンビだよな。仲がよくて羨ましいよ」

 明日香も慶介も瞬時に言葉を返す。

「ただの腐れ縁です」

 見事に重なった台詞に、先輩はさらに感慨深く頷いている。

「息ピッタリだな」

 また台詞が重なるのは嫌で黙ると、慶介も今度は黙っている。再び同調しているようで面白くない。

 明日香も慶介も渋い表情で顔を見合わせると、そのまま黙って静かに元の作業へと戻った。
< 6 / 184 >

この作品をシェア

pagetop