この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「これなら検討会もなんとかなりそうだね。組み合わせはもう少しいろいろ試したいところだけど、この方向で改良してもらおうか。穂高、サポートお願いできる?」

 塩レモンの担当はあくまでも後輩だから、勝手に調整を加えることはしない。調整の方向性だけ伝えて、調整作業は後輩本人に任せるつもりだ。

 検討会まであまり時間はないが、慶介がサポートについてくれればまず問題ないだろう。

「任せとけ。如月の考えはちゃんと理解してるから安心しろ」
「さすが穂高。よろしくね」

 にこっと微笑みながらそう言えば、なぜか慶介は明日香の顔をじっと見つめながら近づいてくる。

「穂高?」

 至近距離で見つめられ、さらには慶介の手に頬を包み込まれる。突然の急接近に明日香の心臓はバクバクと強く脈打ち始めた。

 いったい職場でなにをするつもりなのかと一人狼狽える。慶介は顔をぐっと近づけてきたかと思うと、なぜか親指で明日香の口元をぐいっと拭ってきた。

「口元にソースつけるってガキかよ」

 その台詞とともに慶介は離れていく。どうやらパスタソースが口元についてしまっていたらしい。

「っ……ありがとう」

 口元にソースをつけていたことが恥ずかしくて、慶介に触れられたことが照れくさくて、明日香は俯き加減でそう答えた。

 まだ心臓が少し速いリズムで鼓動を刻んでいる。

 きっと以前の明日香であれば、慶介のからかいになにか文句を言っていただろう。だが、今はただただ照れることしかできない。

 慶介にからかわれたことよりも、触れられたことばかりに意識がいく。深い意味はなかったとしても、彼に触れられたことに喜びを覚えている自分がいるのだ。

 最近は『好き』と口にするたびに胸が高鳴っていて、明日香は慶介のことを少しずつそういう相手として意識し始めている。

 慶介の雰囲気も、アイスを一緒に食べたあの日以来、ぐっとやわらかくなっていて、二人の間には頻繁に甘酸っぱい空気が流れる。

 まさに今もそういう空気が生まれていて、二人はちらちらと視線を合わせ、互いにはにかんでいた。
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