この好きが本当になるまで ~腐れ縁の友人と嘘の恋を始めたら~
「それで、大事な話ってなんなの? この流れなら悪い話じゃないんでしょ?」

 感謝の気持ちから入るなど随分と遠回しだが、おかげでいい話なのだという予想がつく。そして、その予想はきっと正しい。

 なにしろ将人はとても嬉しそうな笑みを浮かべている。

「すごくいい話だよ。あのね、明日香」

 そこで言葉を区切る将人に、明日香は期待からくる生唾を飲み込み、少しだけ身を乗り出しながら次の言葉を待った。

「奈菜との結婚が決まった。来年には結婚式も挙げるよ」

 わーっと嬉しい気持ちが広がるとともに、強烈な切なさに襲われる。将人と奈菜の幸せそうな姿が脳内に浮かぶが、すぐに別の姿で埋め尽くされる。

 とても苦しそうな表情を浮かべる慶介の姿が脳内を占めていく。

 二人の結婚が嬉しくてたまらないのに、慶介のことを思うと切なくてたまらなかった。

 二つの感情で心がざわざわとして落ち着かないが、今は嬉しい気持ちにだけ目を向ける。

「……そう。そうなんだ。やっと結婚決まったんだ。よかったね、将人。おめでとう」
「ありがとう。明日香のおかげだよ。たくさん背中を押してくれたからね。本当にありがとう」

 仕事がなかなか上手くいかずに、弱気になっていた将人を慶介と二人で何度も励ました。奈菜を養っていける自信がないと弱音を吐く将人に、二人で力を合わせて幸せになればいいと、ずっと二人を応援してきた。

 そうしないと明日香も慶介も報われなかったから。とても胸が痛かったけれど、将人と奈菜が強く惹かれ合っていることはわかっていたから、その背中を押してきたのだ。

 これでようやく明日香と慶介の切ない恋も報われる。なにより、将人と奈菜がそこにたどり着けたことが嬉しくてならない。

「なに言ってんの。将人が頑張った結果だよ。本当によかったね。私もすごく嬉しい。本当におめでとう」

 明日香も将人も嬉しさからくる涙を瞳に浮かべながら微笑み合った。

 どうかこの先の将人と奈菜の人生が幸福に満ちたものでありますようにと、明日香は強く、強く願った。
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