お断りしたはずなのに、過保護なSPに溺愛されています
紗良は、父の手の温もりを感じながら、ゆっくりと頷いた。
「……わかった。私……橘さんの警護、受け入れる」

その言葉に、父は安堵したように小さく息を吐いた。
それから、少し照れくさそうに口元をほころばせる。

「まさか、お前が恋を知らなかったとはな」

紗良の眉がぴくりと動いた。
途端に、むっとした表情で言い返す。

「それは——お父さんが、色々と制限かけてきたからでしょ!」

父はふっと吹き出した。
「……ああ、確かに。否定はせんよ」
そう言って、目元を少しだけ細めた。

「でもな、そんなお前が、こんなふうに泣いて、苦しんで、誰かを大切だって思えるようになった。それが、何より嬉しいよ」

紗良は、少しだけ口を尖らせながら、布団の上に視線を落とす。
「……大切になりすぎたら、怖いだけなんだよ」
小さな声で、ぽつりとこぼした。

父はその言葉には応えず、ただそっと頭を撫でた。
それが、彼なりの答えだった。
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